高齢者の運転

最近、高齢者が運転中に重大な事故を起こすという報道が多くなってきました。交通事故死者数は減っていても、高齢者の起こす事故は増えているそうです(警察庁発表交通事故死亡者統計より)。

 

  • 横断禁止場所の横断
  • 信号無視・青信号点滅時の横断
  • 一時停止義務違反

 

などが代表的な違反例ですが、ここにあげた以外にも表面にあらわれていない違反がかなりあります。

 

地方では、自動車がない生活は考えられないようですし、運転者の年齢は年々高くなってきています。

 

高齢者は、自分では安全運転を心掛けているつもりでも、他人が客観的にみると安全運転とは言えない場合があると言われています。その理由として、 個人差はありますが、

 

  • 注意力や集中力が低下していること
  • 瞬間的な判断力が低下していること
  • 過去の記憶や経験にとらわれやすいこと

 

などが挙げられます。また、一般的に加齢に伴う動体視力の衰えや反応時間の遅れなど、身体機能の変化により、危険の発見が遅れがちになります。

 

走り慣れた道路でも、基本に立ち戻り、正しいルールと技能を再確認し、適度な緊張感を持って運転することが、高齢者には求められます。

 

運転に不安を感じて自信がなくなってきた方や、家族から「運転が心配」と言われた方は、運転免許の自主返納をすることができます。有効期限内に運転免許を返納し、その日から5年以内であれば、運転免許試験場へ申請することにより「運転経歴証明書」の交付を受けることができます。

 

運転経歴証明書は、過去の運転経歴を証明するもので、運転免許証と同様、銀行口座を開設する際などに必要な身分証明書として使うことができます。また、提示をすることにより、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店や東京都の文化施設、美術館等で様々な特典を受けることができます。都内の各運転免許試験場(府中、鮫洲、江東)では、運転経歴証明書の即日交付を行っています。

 

しかし、今まで日常的に運転をしてきた高齢者は、すぐに免許の返納をする決心がつきません。衰えを感じたまま、だらだらと運転を続けることになります。

 

自動車の運転免許証は、取得可能になる年齢の下限は定められていますが、一度取得した免許は、いくら高齢になっても失効することはありません。本人に免許を手放す気がなければ、基本的には死ぬまで有効なのです。

 

このような現状から、警察は、70歳以上の高齢運転者には、免許更新の際に、高齢者向けの講習を受講することを義務付けるようになりました。

 

その昔、1997年に道路交通法が改正され、75歳以上の高齢運転者には、「高齢運転者標識」というシールを車に貼って運転することが決まりました。第71条の5【初心運転者標識等の表示義務】その2では「75歳以上の者は高齢運転者標識を付けないで運転してはならない」としています。高齢者運転標識は、以前はだいだい色と黄色の2色に塗り分けられた葉っぱのマークで、「枯葉マーク」の通称で呼ばれていましたが、2011年2月からは4つ葉のクローバーにシニアのSの文字を組み合わせたデザインに変更されました。ただし、道路交通法附則第22条には、この条文の適用を当分の間免除するという条項があり、現在では違反者に対する罰則はありません。

 

このシールを付けた車の周囲の運転者は、保護する義務を負っていて(道路交通法第71条第5号の4)、幅寄せ、割り込みなどを行ってはならないとし、違反者は初心運転者等保護義務違反に問われます。

 

このような高齢者による事故をなくすには、当人の注意だけでは万全とはいえません。交通システムそのものを根本的に見直す試みが始まっています。

 

実験が始まっているのは、低速モビリティと呼ばれる電気自動車です。時速30km以下では、もし歩行者をはねても、被害者が亡くなる可能性は1%以下に抑えられます。そこで、時速20kmの自転車と同程度の速さの乗り物が、今後の高齢者の足として期待されています。そして、最高速度や大型車両の通行を規制する地域を街中に作れば、高齢者にも優しい道路が実現できます。

 

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